チ。は実話?史実との違いを年表で検証|地動説で焼かれた人はいたのか

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『チ。―地球の運動について―』を読み終えて、「これ、どこまで本当なんだ」と検索した方へ。結論から書きます。実話ではありません。

作中では地動説を研究しただけで拷問を受け、火あぶりにされます。あの迫害は史実にありません。作者の魚豊は連載中のインタビューで「『チ。』で描かれる迫害はフィクション」と明言しています。それどころか、世間が信じている勘違いのほうを面白がって、テーマに選んだと語っています。

筆者は年間100冊以上漫画を読みますが、歴史ものは長いこと苦手でした。『チ。』も「15世紀ヨーロッパ」「宗教裁判」と聞いて2年ほど後回しにしていた口です。読み終えたあとで地動説の歴史を自分で調べ直し、作中と史実のズレの大きさに驚きました。この記事はその調べ直しをまとめたものです。

電子版は全8巻とも759円で、合計6,072円です。Amebaマンガの新規登録なら購入額の50%が即時還元されるので、実質3,036円になります。この還元は上限が「100冊まで」という冊数側にあり、金額のほうに上限がないので、8巻がまるごと半額の対象に入ります。

この記事で分かること
  • 『チ。』が実話ではないと、作者本人がどう語っているか
  • 史実のコペルニクスが、迫害されるどころか教皇に献本していた話
  • 「地動説で焼かれた」とされるブルーノの、本当の罪状
  • 作中の出来事と史実を並べた年表(作中の15世紀に地動説はまだない)

結論:作者が「迫害はフィクション」と明言している

『チ。』の舞台は15世紀前半のヨーロッパ、「P王国」という国です。人々が信じているのは「C教」。どちらもイニシャル1文字で、実在する国名も宗教名も最後まで出てきません。

ラファウもオクジーもバデーニもヨレンタも、実在しない人物です。異端審問官ノヴァクも同じ。第1章から第3章までに出てくる人物で、歴史上に名前が残っている人は一人もいません。

ここまでは想像がつくと思います。問題は迫害のほうでした。

地動説を研究したせいで爪を剥がされ、火あぶりにされる。あれだけ執拗に描かれると、史実にも似たことがあったのだろうと考えたくなります。魚豊はそこをはっきり否定していました。連載中盤のインタビューでの発言がこちらです。

現代では地動説を唱える人たちへの迫害があったと思い込んでいる人が多いが、史実ではどうやら、地動説ってそこまで迫害を受けてはいなかったらしい

魚豊(コミスペ!インタビュー・2021年5月)

同じインタビューで「この勘違いも面白く感じて、テーマにしたいと思った」「『チ。』で描かれる迫害はフィクション」とも述べています。読者が勝手に持っている思い込みを、作品の土台に使ったということです。

史実のコペルニクスは、教皇に献本して枢機卿から賞賛されていた

チ。の迫害描写と史実の教会の違い

地動説といえばニコラウス・コペルニクスです。1473年生まれ、1543年没。この人の人生を追うと、作中との落差がはっきりします。

コペルニクスは生涯カトリックの聖職者でした。ヴァルミアの司教座聖堂参事会員として、文書管理も財産管理もこなしています。教会に追われるどころか、教会の内側で働き続けた人です。

1533年には、コペルニクスの考えが教皇クレメンス7世に伝えられました。1536年には枢機卿ニコラス・シェーンベルクから賞賛の手紙が届いています。主著『天球の回転について』は死の直前の1543年に出版され、教皇パウルス3世に献本されました。批判の声はあったものの、大きな問題には発展していません。

もう一つ、教会と天文学の関係を示す出来事があります。1512年から開かれた第5ラテラン公会議で、教会暦の改良が議題に上がりました。このときコペルニクスは意見を求められています。暦を正しく作るには天文学が要る。だから教会は天文学者を必要としていました。

作中の構図は「真理を隠したい教会 対 知を求める個人」です。史実の教会は、天文学の担い手そのものでした。

では地動説で焼かれた人はいたのか|ブルーノの罪状は24項目あった

「でもブルーノは焼かれたはずだ」と思った方へ。ここは事実が違います。

ジョルダーノ・ブルーノは1600年2月17日、ローマのカンポ・デ・フィオーリ広場で火刑に処されました。コペルニクスの地動説を支持し、宇宙は無限で中心を持たないと主張した人物です。

ただし有罪の理由は地動説ではありませんでした。判決の根拠になったのは三位一体やキリストの神性を否定する教説です。最終的に罪状は24項目に膨らみ、魔術・占術の信奉、マリアの処女性の否定、輪廻説の支持などが並びました。20世紀後半以降の研究でも、処刑は主に神学上の異端とみなされたことによる、と整理されています。

ガリレオ・ガリレイは1616年の裁判で、地動説を擁護することを禁じられました。1632年に『天文対話』を出し、翌1633年に有罪判決を受けています。こちらは確かに地動説がらみです。

問題は年号でした。ブルーノもガリレオも、作中の15世紀から150年以上あとの人です。『チ。』の時代に、地動説をめぐる裁判はまだ起きていません。

作中と史実を並べた年表|15世紀に地動説はまだ生まれていない

チ。の作中の時代と史実の年表のズレ

調べたことを1本の時間軸に並べました。作中と史実がどれだけ離れているかは、表のほうが早いです。

出来事区分
15世紀前半P王国で地動説の研究者が拷問・火刑にされる(第1〜3章)作中(架空)
1445年ごろアルベルト・ブルゼフスキ生まれる史実
1460年代後半ポーランド王国。パン屋で働くアルベルト(最終章)作中(実在の国名)
1473年ニコラウス・コペルニクス生まれる史実
1482年ブルゼフスキが『惑星の新理論』の注釈書を書く史実
1491年コペルニクスがクラクフ大学に入学史実
1543年『天球の回転について』出版。コペルニクス死去史実
1600年ジョルダーノ・ブルーノ火刑(罪状は神学上の異端)史実
1616年ガリレオが地動説の擁護を禁じられる史実
1633年ガリレオに有罪判決史実

作中で人が焼かれている15世紀前半の時点では、体系的な地動説を唱えた人がまだ現れていません。コペルニクスが生まれるのが1473年です。守るべき地動説がまだ存在しない時代に、地動説を守って死ぬ人たちを描いている。『チ。』はそういう漫画です。

作中で唯一の実在人物|最終章のアルベルト・ブルゼフスキ

ここから最終章の内容に触れます。未読の方は読み終えてから戻ってきてください。

最終章に入ると、それまでの「P王国」「C教」というイニシャル表記が消えます。舞台はポーランド王国とはっきり書かれ、主人公はパン屋で働く青年アルベルト。この人物が実在します。

アルベルト・ブルゼフスキ。1445年ごろに生まれ、1497年ごろに没したポーランドの天文学者です。クラクフ大学で教え、当時定説だった天動説に懐疑的な見解を持っていました。

作中で大学教員になったアルベルトが「惑星の新理論」の注釈書を書く場面があります。ここは創作ではありません。ブルゼフスキは1482年にポイルバッハの『惑星の新理論』への注釈書を執筆し、1495年にミラノで出版されています。

そして1491年、クラクフ大学に一人の学生が入学しました。ニコラウス・コペルニクスです。コペルニクスが初めて天文学に触れたのは、ブルゼフスキの講義でした。

第1章から第3章までまるごと架空の話をやっておいて、最終章で史実に接続する。筆者は8巻を読み終えた瞬間、1巻から読み返しました。最終章を知ってから読むと、1巻の同じ場面が違って見えます。

史実と違うのに、科学史の学会が賞を出している

「史実と違うなら価値がないのでは」と考える方もいると思います。受賞歴を見ると、そうはなっていません。

受賞・選出
2021年マンガ大賞2021 第2位
2022年第26回 手塚治虫文化賞 マンガ大賞
2022年理化学研究所などの「科学道100冊」に選出
2023年第54回 星雲賞 コミック部門
2024年第18回 日本科学史学会 特別賞

2024年の行を見てください。科学史を研究している学会が、史実と食い違う漫画に賞を出しています。史実の再現ではなく、「知ることに人生を賭ける」という営みを描いた作品として評価されたということです。

累計発行部数は2025年2月時点で500万部を突破しました。

主人公が入れ替わりながら進む|報われないと分かって命を賭ける人たち

ここからは筆者の感想です。

読んでいて手が止まったのは、主人公が入れ替わっていく作りでした。1人の天才が真理にたどり着いて終わる話ではありません。ラファウが退場し、オクジーが退場し、そのたびに研究の記録だけが次の誰かの手に渡っていきます。

彼らは、自分が答えを見る側だとは思っていません。それでも命を賭けます。生きているうちには報われないと分かったうえで、次の世代に手渡すために死んでいく。この執念が8巻のあいだ何度も繰り返されます。

しかも彼らが信じていたのは、当時まだ誰も証明していない説でした。正しいかどうか分からないものに、人生を丸ごと差し出している。読みながら、自分なら答え合わせのできないものに何年かけられるだろうかと考えていました。

読み終わると、なぜか勉強がしたくなります。天文学の知識が増えるからではありません。「知りたい」という気持ちだけで人はここまで行けるのだと見せられると、自分も何か調べずにいられなくなる。筆者がコペルニクスを調べ始めたのも、この読後感からでした。

「チ。」というタイトルの意味は3つある

タイトルについても魚豊が答えています。「チ」は大地のチ、血のチ、知識のチ。この3つです。

句点の「。」にも意味があります。句点は文章の終わり、つまり停止を表す記号です。止まっている大地を「。」で示し、そこに地動の線である「チ」が入ることで、動かなかったものが動き出す。地球は動くのか動かないのかを、2文字で表現していました。

もう一つ、実務的な狙いもあったそうです。一文字と句点だけの題名にすればインターネットで検索しづらくなる。魚豊自身がエゴサーチで他人の意見に引きずられないようにするためです。読者にも、感想を見ずに自分の意見を持ってほしかったと語っています。

タイトルの回収の仕方が、筆者はこの作品でいちばん好きです。

読んでいる最中は、なぜ「チ。」なのか分かりません。大地の話が続き、血が流れ、知が次の世代へ渡っていく。8巻を読み終えて表紙に戻ったとき、たった1文字と句点にそれが全部入っていたと気づきます。1文字と句点だけの題名でここまでやる漫画を、筆者は他に読んだことがありません。

歴史が苦手でも読める|筆者は読んでから史実を調べた

予備知識がなくても読めるチ。の魅力

この記事をここまで書いておいて言うのもなんですが、史実を知らなくても『チ。』は読めます。必要な予備知識はゼロです。

「なぜ地動説が禁じられているのか」「教会がどれだけの権力を持っているのか」は、登場人物の会話と行動だけで伝わってきます。天文学の用語もほとんど出てきません。出てくるのは「星がきれいだ」「この仕組みを解き明かしたい」という、生の感情のほうです。

筆者の場合、順番が完全に逆でした。歴史が面白いから読んだのではありません。読んだあとにコペルニクスとブルーノを自分で調べ直し、この記事の年表を作るところまで来てしまいました。

史実の扱い方という点では、『テンカイチ 日本最強武芸者決定戦』が対照的です。あちらは登場人物も逸話も史実そのままで、書き換えているのは「信長が本能寺で死ななかった」という世界線だけ。『チ。』は逆に、人物を全部架空にして最後だけ史実へ着地させます。同じ歴史ものでも作り方が正反対でした。テンカイチの史実検証はこちら

全8巻を読み直すなら|6,072円を実質3,036円にする

『チ。』は2022年4月に連載を終え、単行本は全8巻・全62話で完結しています。電子版の価格は各巻759円で統一されていて、8巻そろえると6,072円です。

まとめて買うならAmebaマンガです。新規登録後の初回購入で、購入額の50%がマンガコインで即時還元されます。6,072円の買い物で3,036円分が戻る計算になり、実質3,036円。この特典は冊数の上限が100冊で、金額のほうに上限がありません。8巻ならまるごと半額の対象に入ります。

条件が2つあります。マンガコイン決済のみが対象で、コインを買っただけでは還元されません。そのコインで作品を購入して初めて成立します。もう一つ、クーポンの有効期限は取得した曜日で変わります。木曜に取得すれば1週間使えますが、水曜に取得するとその日の23:59までです。買う日を決めてから登録してください。

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その場合は2つの選択肢があります。まず1巻だけ試すならDMMブックスです。初回70%OFFクーポンは割引の上限が500円なので、759円の1巻が259円になります。8巻まとめてならBOOK☆WALKERの初回50%コイン還元で、こちらは金額に上限がありません。

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紙で揃えたい方は全8巻セットが6,160円です。▶ Amazonで『チ。』を確認する

アニメ版は全25話で原作の最後まで描いている

アニメは2024年10月5日から2025年3月15日まで、NHK総合で連続2クール・全25話が放送されました。制作はマッドハウス。原作全8巻の最後まで描き切っているので、「アニメの続きは何巻から」という読み方は必要ありません。

オープニングはサカナクションの「怪獣」。エンディングはヨルシカで、第1章・第2章が「アポリア」、第3章・最終章が「へび」です。

配信で見返すなら安いアニメサブスクの比較を参考にしてください。

まとめ:嘘なのは「迫害」の部分だけ

『チ。』は実話ではありません。P王国もC教も架空で、ラファウたちも実在しません。地動説の研究者が拷問され火刑にされる展開は、作者本人がフィクションだと明言しています。

史実のコペルニクスは教会の内側で働き、教皇に献本して枢機卿に賞賛されました。ブルーノが焼かれたのは神学上の異端が理由で、しかも作中より150年以上あとの話です。

それでも最終章のアルベルト・ブルゼフスキは実在し、彼の講義を受けた学生の中にコペルニクスがいました。嘘の世界を7巻分積み上げて、最後の1歩だけ本当の歴史に着地させる。科学史の学会が賞を出したのは、たぶんそこです。

そして読んでいる最中は、史実かどうかを忘れます。確かめようのないものを信じて、次の誰かに渡すためだけに死んでいく。その繰り返しを追いかけるので手一杯になります。筆者は読み終えた夜、実際に空を見上げに出ました。

年表を頭に入れてから読み返すと、1巻の見え方が変わります。全8巻6,072円が実質3,036円になるうちに、もう一周してみてください。

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